第210章

病院のロビー。中村奈々はベンチに腰を下ろし、出入り口を行き交う人々を虚ろな目で眺めていた。

ぼんやりと座っているだけで、心身ともに疲れ果てていた。

中村美知子の自分に対する態度は、物心ついた頃からずっとあんな調子だ。今さらその冷淡さに傷つく必要なんてない。

今頃、頭を抱えているのはあの母子の方で、自分ではないのだから。

そう自分に言い聞かせると、彼女はゆっくりと立ち上がり、自動販売機でホットコーヒーを買った。

受け取った瞬間、背後から誰かに強くぶつかられた。コーヒーが胸元に飛び散り、熱さに思わず身震いする。

眉をひそめて顔を上げると、華やかな身なりの四十代から五十代くらいの中年女...

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