第252章

「帝都に来てまだ数日ですし、お会いする機会なんてなかったはずですよ」

 中村奈々が慌てて言うと、続けて自嘲気味に笑った。

「たぶん、私の顔が地味でよくある顔だからでしょう」

 小出暖人はハッとしたように彼女を凝視し、驚きの声を上げた。

「中村奈々……って、あの中村奈々さん? 高木昭先生の愛弟子で、絵本『無妄』の作者の!?」

 中村奈々はいささか気恥ずかしさを覚えた。

 まさか自分が、少しは名の知れた存在になっていようとは。

「ご存知なんですか?」

「当たり前じゃないですか! 今や国内でも引く手あまたの画家ですよ!」

 そう言うと、彼は興奮して中村奈々の肩を拳で小突いた。

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