第254章

一方、大城佑美は持てる女の武器を総動員していた。舌先で唇を艶めかしく湿らせ、とろけるような猫撫で声で囁く。

「最近、会社で黒田社長のお姿を拝見できなくて……あたし、寂しかったですわ」

「ああ」

彼は気のない返事を喉の奥で鳴らしただけで、瞼すら上げようとはしない。

素っ気ない反応にも、大城佑美はめげなかった。これくらいで落ちるような男なら、社内の誰もが憧れる『高嶺の花』であるはずがないのだ。

彼女は勝手に話題を紡ぎ続け、いつの間にか話の矛先は部署の新人へと向く。

「……あたし、会社の人事基準に口を出すつもりなんてありませんけどぉ、あんな小娘を適当に入れちゃうなんて、ちょっとプロ意識...

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