第267章

「ほう? どういうことだ?」

 黒田謙志は顎を撫でながら、彼女を見つめる。その瞳に宿る熱は、さらに強まっていた。

 中村奈々はその熱っぽい視線に気づかないふりをして、話を続けた。

「……彼は、自分が現れることで、あなたが感情を制御できなくなるのを知っているんです」

「なぜ俺が感情を制御できなくなる必要がある?」

 黒田謙志が突然言葉を遮った。

「それは……」

 中村奈々は彼の顔に視線を走らせ、唇を引き結んだまま口ごもる。

 黒田謙志は愉快そうに笑った。機嫌が良くなったようだ。

「お前のことが心配だから、か?」

 中村奈々は視線を逸らし、気まずそうに表情を強張らせる。

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