第271章

光岡和哉が立ち去ってから随分と時間が経ち、ようやく中村奈々はふらふらと屋上から降りてきた。

今夜は本当に飲みすぎた。アルコールが血管という血管を駆け巡り、足元はおぼつかず、頭はまるで綿の上に乗っているかのようにふわふわと頼りない。

彼女は強く頭を振り、少しでも意識をはっきりさせようと努めながら、力の入らない足で一歩ずつ階段を降りようとした。

その時だ。鉄の輪のような力強い手が、彼女の細い腰をガシリと掴んだのは。次の瞬間、強烈な力で非常階段の陰へと引きずり込まれる。

悲鳴を上げる暇すらなかった。覇道そのものの熱い口づけが、有無を言わせず降り注いできたのだ。

中村奈々の心臓が跳ね上がり...

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