第273章

察した黒田謙志の目が、すっと細くなる。暴れ出した中村奈々の両手をがしりと掴み、低く厳しい声が落ちた。

「奈々、やめろ。聞こえないのか」

中村奈々はぶんぶんと首を振り、なおも抵抗を続ける。

身体は欲望に突き動かされていて、理性なんてもう役に立たない。ただ、目の前の男をめちゃくちゃに抱きしめたい――その思いだけが、彼女を支配していた。

まるで反省の色も見せない様子に、黒田謙志は短く息を吐き、仕方なく指先に力をこめて彼女の顎をきゅっと掴む。無理やり顔を上向かせ、視線を絡め取った。

「ちゃんと聞け。やめろって言ってる」

ぱちぱち、と中村奈々が瞬きをする。きょとんとした、無邪気な顔。

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