第285章

「すみません……」

「なんだ、都合が悪いか?」

光岡和哉は眉をひそめるでもなく、面白がるような視線で彼女を見つめた。

しばしの沈黙の後、中村奈々はずっと頷いた。

「分かりました」

光岡和哉はパッと表情を明るくした。

「じゃあ、俺の車に乗っていけよ」

中村奈々はその足で黒田美紀子にメッセージを送り、急用で行けなくなったと伝えた。

黒田美紀子からの返信は早かった。

『また今度ね』

表に出ると、光岡和哉の車はすでに待機していた。彼は電話中で、中村奈々に気づくと顎で助手席をしゃくり、そのまま車を走らせた。

「……これで何度目だ?」

光岡和哉の声色は硬い。相手とは相当親しい間柄...

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