第288章

「ちょっ……変なこと言わないでください!」

中村奈々は顔を真っ赤にして、慌てて彼の手を口で塞ごうとする。山本大賀は無言でくるりと背を向け、さらにそそくさと数歩横へ移動して距離を取った。

黒田謙志はその手を順手で掴み、口元に微かな、それでいて意味深な笑みを浮かべた。

「それとも、今ここで公表してほしいのか?」

「公表って何をですか? 私たちに公表できるような関係なんてありませんし、それに今は……いえ、もういいです」

このタイミングで森田美波の名前を出したくなかった。まるで自分が気にしているみたいではないか。

中村奈々は慌てて彼から距離を取り、正面に向き直ると、少し畏まった態度を見せ...

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