第292章

二人は抱き合ったまま、堤防の隅で身を寄せ、深く唇を重ねていた。

中村奈々の身体がびくりと震える。息は乱れ、頭の芯がふわふわと浮いていくような、雲の上に放り出されたみたいな感覚に呑まれていく。

黒田謙志が唇を離したとき、彼女の頭の中は真っ白だった。

彼の掌がするりと襟元に滑り込み、そのまま服の中へと潜り込む。

長くて骨ばっていない指先が、なめらかな鎖骨のラインをゆっくりとなぞり、やがて柔らかな胸元で止まった。

「奈々……」

低く掠れた声で名前を呼ばれ、耳の奥がじんとする。

中村奈々は荒く息を吸い込み、慌てて彼の手首を掴んで制した。

「や、やめて……!」

どうしてこんなところで...

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