第298章

あまりに突然の出来事に、その場にいた誰もが状況を飲み込めずにいた。ようやく我に返って視線を凝らすと、そこには赤ワインを頭から浴び、見るも無残な姿になった中村奈々の姿があった。

「あんた、気でも狂ったの!?」

真っ先に飛び出したのは山下富美子だ。彼女は中村奈々を自分の背に隠すと、慌ててティッシュで濡れた肌を拭う。そして振り返るなり、乱入してきた女を鬼の形相で睨みつけた。

斉藤空も呆気にとられている。

「葵、お前……」

一方、森田美波は動じる様子もなく、優雅にグラスを傾けて赤ワインをひと口含んだ。

「いいお酒なのに、もったいないこと」

わざとらしい舌打ちが響くが、今のこの状況で彼女...

ログインして続きを読む