第304章

「お前が知らないことなんて、山ほどあるって」

斉藤空は腹を抱えて笑い転げた。

「あの子に一目会うためだけに、恋愛ドラマのくさい演出を全部やり尽くしたんだからな」

二人が盛大に笑うのを見て、黒田謙志も身を起こした。ヘルメットを手に取ると、二人を一瞥し、挑発的に言い放つ。

「笑い終わったか? もう一回やるぞ」

「俺が怖じ気づくとでも?」

「上等だ!」

三つの車が稲妻のように山頂から駆け下り、エンジンの咆哮が谷間に木霊した。

森田美波は山麓で長いこと待ち続け、三人が無事に戻ってくるのを見て、ようやく安堵の息をついた。

「男ってのは死ぬまで少年だなんて言うけど、本当ね」

彼女はそ...

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