第306章

しかし次の瞬間、光岡葵は掌を返したように冷たい声で言った。

「中村さんがとばっちりを受けたのは分かってるわ。でも、この絵をダメにしたのは事実でしょ。信用できないなら監視カメラを確認してもいいし、警察を呼んで白黒つけても構わないわよ」

光岡葵は瞬時に感情を切り替え、何事もなかったかのように、この名画の賠償問題について淡々と話し始めた。

中村奈々は胸の奥がモヤモヤとした。一体、私が何をしたっていうの?

だが、どうしようもない。絵が破損した以上、自分にも責任の一端はある。向こうが警察沙汰も辞さない構えである以上、どうすることもできない。仮に法廷で争ったとしても、こちらの過失割合はせいぜい二...

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