第10章

記憶の中の、学内のバスケットボールコートで女の子たちの視線を独占していた背中――それが、今目の前の男と重なった。

栞は目をわずかに見開き、何をしたか理解するより先に、くるりと踵を返して走り出そうとする。

「やっぱ、かっこいい……」

歩美の感嘆は最後まで続かず、栞に引っ張られて体が一回転し、転びかけてよろめいた。

「ちょっと、どうしたの?」

「どうしたの、じゃないでしょ」

栞は今すぐ彼女の頭をはたきたくなるのを必死で堪えた。

「あなたが言ってた“謎の大物”って……あの人なの?」

「そうだよ。一ノ瀬家の次期後継者、一ノ瀬司。十分ミステリアスで、格も文句なし。へへ、どう?」

「ど...

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