第102章

司は良行を一瞥だにせず、ただひたすらに栞だけを見つめていた。

良行は軽く舌打ちをして、自ら傍らのソファに腰を下ろした。

「まあいい。お前が感傷に浸る気分じゃないのは分かった。なら、真面目な話をしよう」

「ああ」

しばらくして司は短く応じたが、振り返ろうとはしなかった。

良行は目を細めた。司が完全に彼女にのめり込んでいるのは、火を見るより明らかだった。

だが、恋愛というものは他人も自分も傷つける。

ましてや栞は今、人妻という身分だ。これほど親密な様子を見せれば、どれほどの非難を浴びるか分からない。

世間の噂を司の力で揉み消せたとしても、一ノ瀬家と倉橋家からの二重の圧力はどうする...

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