第129章

誰が逆らえるというのか。

栞は小走りで後を追いかけた。その顔はひどく渋く歪んでいる。

だがエレベーターの中に、車内でのあの甘い空気は微塵も残っていなかった。彼女は司の対角線上に立ち、可能な限り距離を取っている。

遠はそれを面白そうに眺めていた。やはり酒はいい。人と人との感情を早めてくれる。

エレベーターのドアが開くやいなや、栞は真っ先に飛び出した。一刻も早く自分の部屋に逃げ込みたかったのだが、ドアの前に立つ黒い影を見て思わず息を呑んだ。

「誰っ!」

思わず漏れた声に、全員の視線が一斉にそちらへ向く。

センサーライトが点灯し、そこにいるのが蓮だと分かった。

彼は酒を飲んでいた。...

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