第143章

遠は栞の姿を見るなり、ぱっと目を輝かせた。

もう限界だった。この午前中、一ノ瀬社長の周囲はまるで冷房でも全開にしているかのような冷気が漂い、遠の心まで芯から凍りつきそうだったのだ。

「一ノ瀬社長に用だよね? 今、執務室で書類に目を通してるから、そのまま入っていいよ」

「何よ、その顔」

栞は眉をひそめ、いぶかしげに司の執務室のドアをちらりと見てから、遠に視線を戻した。

「まさか一ノ瀬社長が不機嫌だからって、私を八つ当たり用のサンドバッグにする気じゃないでしょうね?」

いくら自分の身が可愛いからって、他人を身代わりにしようなんて狡猾すぎる!

その疑り深い眼差しを受け、遠は必死に誠実...

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