第33章

蓮は陰鬱な顔のまま会社へ向かった。

栞の頑なさに腹を立て、さらに彼女と司が裏で通じているのだと決めつけている。憎しみ混じりの苛立ちで胸が煮え返っていたが、今日は両社の提携契約の調印日だと美月から連絡が入った以上、断るわけにもいかなかった。

会議室に入ると、いるのは彼女ひとりだけ。蓮の眉間に深い皺が刻まれる。

「お前が橘グループの代理でサインするつもりか?」

「まさかぁ」

彼女は艶っぽく笑い、立ち上がるなり駆け寄ってきて、媚びるように蓮の腕に抱きついた。

「サインするのはお兄ちゃんだよ。ただ……」

ぱちりと瞬きをした途端、その瞳にうるうると涙が浮かぶ。声まで、かすかに震えて。

...

ログインして続きを読む