第45章

「ワンワン」という鳴き声と、腕の中の柔らかさで、栞はようやく我に返った。

見下ろすと、子犬がつぶらな黒い瞳をぱちぱちさせている。全身ふわふわの茶色い毛が、たまらなく可愛い。

「栞、あなたにって、わざわざ買ってきたプレゼントだよ」

車のドアに寄りかかった歩美が、にししと笑う。

「今度クズ男がまた絡んできたら、犬に噛ませてやろう。直接!」

――こんなちっちゃい子が、人を噛む?

栞にはまったく想像がつかなかった。けれど、以前、自分が歩美にこぼした言葉がふっと蘇る。

大きな犬を飼って、そばにいてもらいたい。でも子犬の頃から育てないと、情が深くならない気がして怖い。

だから歩美は、子犬...

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