第46章

栞がスマホを取ろうとして、思わず手を止めた。

「歩美、私と一ノ瀬社長はただの上下関係だよ。それも、まだ正式に入社してすらいない上下関係」

「そんなのに、あの人が私のために動くわけないじゃない」

口にしながら、どこか後ろめたい。――まさか、彼が私たちが同じ大学だったことに気づいて、ついでに“あの一件”まで思い出したんじゃ……?

そうなったら、まさに踏んだり蹴ったりだ。

助けるどころか、むしろ念入りに踏みつけてくる。二、三発くらいは平気で。

そんなふうに考えた途端、完全に立ち直れなくなる未来が見えてしまって――。

栞は、電話に出ることすら怖くなった。

歩美が焦れた声を上げる。

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