第50章

最後の数文字が妙に懇願めいていて、どこか拗ねたような響きまで混じっていた。

――何を委屈がる資格があるの?

左に抱いて右に抱いて、裏切ったのはあいつだ。

それなのに、泥をかぶって悪者にされたのは彼女のほう。

栞は腕の中のきなこを指先でそっと撫でる。声が、どこか遠い。

「……嫌」

「戻ってこい!」

拒む隙も与えず、蓮は強引に言い切った。

「でなきゃ、手を尽くしてでも探す」

今でさえ十分に混乱している。これ以上厄介を増やしたくなくて、栞は結局、頷くしかなかった。

通話を切ると、きなこに水と餌を用意し、歩美にメッセージを送る。それから家を出ようとした――そのとき。

玄関に向か...

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