第55章

遠は電話をかけ続け、汗が止まらなかった。

司は一言も発しない。けれど、その身にまとった圧があまりに強くて、遠は息を止めてしまいそうになる。

それでも――何度かけても繋がらない。

泣きたいのに泣けないとは、まさにこのことだ。

「……繋がらないのか?」

沈黙を破った司の声が、遠には地獄の底から響くみたいに聞こえた。

「……はい」

司がふっと笑う。だが、その笑みは陰りを孕み、骨の隙間まで冷気を流し込む。

黒いSUVが、獣みたいな唸りを上げて次々と「ルージュ」の正面に滑り込んだ。

十数人の黒服の護衛が、無駄のない動きで降り立つ。手には金属バット――いや、鉄パイプ。

司は大股で中へ...

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