第57章

「もう、あの人には十分すぎるほど返してきた」

栞は首を横に振った。

「それに、今回の件は彼には関係ない。巻き込んで泥をかぶらせたくないの」

商いは利がすべてだ。

まして一ノ瀬家のような大きな一族なら、たとえ司が先頭に立つ人間でも、好き勝手はできない。

彼女のせいで、司が面倒に巻き込まれるのだけは嫌だった。

歩美がまだ何か言いかけたけれど、栞はさらりと話を切り替える。

「大丈夫。ちゃんと手はあるから」

包帯で幾重にも巻かれた右手に視線を落とし、唇の端だけを持ち上げた。

「蓮は私と一緒にいたくせに、最後にあんな吐き気のすることをした。絶対に許さない」

歩美は反射的に「クズ男」...

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