第68章

良行と司は無言で視線を交わした。その瞳の奥に潜む意味は、傍目には到底窺い知れない。

歩美がたまらず口を開く。

「ちょっと、どういう状況?」

「何でもないよ」

良行は視線を外し、手際よく薬を調合して点滴の針を刺した。

「外傷に加えて極度の精神的緊張だ。熱が出るのも無理はない。今夜中に下がれば問題ないが、ダメなら病院送りだな」

いくら腕の立つ医者でも、必要な医療機器のサポートがなければ限界がある。

司は短く応じ、栞の肩を一定のリズムで軽く叩き続けていた。

そこに分かりやすい優しさなど微塵も見えない。

だが、彼の立場を考えれば、そのささいな振る舞いだけで、彼女をどれほど大切に想っ...

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