第69章

栞は苦笑交じりに言った。

「何を訳の分からないこと言ってるの?」

「訳が分からない? あんたね……」

歩美は彼女の顔色を窺いながら言った。

「まさか、昨夜のこと全部忘れたなんて言わないわよね?」

栞が頷くのを見て、歩美は昨夜、司に遭遇した顛末を語って聞かせた。

もちろん、自分と司の関係は伏せ、司と栞の間にあった甘い雰囲気をこれでもかと誇張して。

「あんたね……」

栞は信じられないという顔で歩美を睨みつけた。

「それで、私を男の人に押し付けて、自分は帰って寝たってわけ?」

だって、ただの男じゃないじゃない。

歩美はそう言い返したかったが、栞の鋭い視線を浴びて、ぐっと言葉を...

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