第80章

栞の頭の中で、けたたましい警報が鳴り響いた。いくらなんでも、入社初日に社長と直属の上司の色恋沙汰を目撃したからって、クビになるなんて冗談じゃない。

彼女は抜け目なくスマホを取り出すと、こっそり写真を二枚撮った。

一ノ瀬グループを辞めること自体は構わないが、濡れ衣を着せられて追い出されるのだけは御免だ。

ただでさえ今の彼女の評判は地に落ちているのだ。これ以上、傷口を広げるわけにはいかない。

保険をかけた栞は、足音を殺してその場を立ち去ろうとした――が、運悪く、足元の小石を踏んづけてしまった。

風の吹き抜けるテラスでは、その微かな摩擦音は決して目立つものではなかった。しかし、司は極めて...

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