第83章

恐怖と不安が一瞬にして押し寄せ、栞は全身がこわばり、身動きすらとれなくなった。

呼吸さえも止まりそうになったその時、低く落ち着いた声が響いた。

「どうしてまだ会社にいる?」

司?

聞き慣れた声と、ふわりと漂うシダーウッドの香りに、張り詰めていた神経がほどけていく。同時に、瞳の奥に薄い涙の膜が張った。

暗闇の中にしばらくいたおかげで、目も少しずつ慣れ、周囲の曖昧な輪郭が掴めるようになっていた。

理性が働くより早く、彼女はその胸に飛び込んでいた。両腕で彼の腰にすがりつき、顔を深く埋める。その身体は、小刻みに震えていた。

司の身体が、ぴたりと硬直する。

腕の中にある柔らかい感触。薄...

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