第85章

正登の激しい怒りは、瞬時に霧散した。

彼は確かに、栞の実の父親ではない。

だが、あの柔らかく小さな赤ん坊を抱き上げた日から、ずっと実の娘として育ててきた。彼女もまた、親思いの素直な子に育ってくれた。

ただ……。

彼は深く息を吐き、凛花の前に歩み寄った。

「分かっているだろう。あの時、不二様がいらっしゃらなければ、私はとうに命を落としていた」

「不二様が私を信じ、お嬢様を託してくださった以上、命に代えてもお守りするのが私の役目だ」

「栞はこの数年、本当によく尽くしてくれている。お前がどれほど理不尽な言葉をぶつけ、冷たく当たろうと、あの子はすべて耐え忍んできた」

「これ以上、取り...

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