第92章
「追い出せ」
司の声は冷え切り、いかなる感情も交じっていなかった。
今の彼は、誰に対しても何に対しても興味がない。ただ、無事な栞の姿を確認したかった。
彼女の身に何か起きたのかと考えただけで、胸が締め付けられ、一秒たりとも落ち着いていられない。
エレベーターのボタンを押し、かごが上がってくるのを待つ間も、眉間には深い皺が刻まれていた。
だが、開いた扉の向こうにいたのは――蓮だった。
その後ろには、困り果てた顔の警備員が二人続いている。
「一ノ瀬社長、申し訳ありません。お止めできず……」
彼らの顔には羞恥と、そして強い不安が浮かんでいた。
警備員でありながら侵入者を一人も阻止...
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