第94章

山波采奈は呆然と栞を見つめていた。何か言いたげだが、どこから話せばいいのか分からないようだ。

栞もそれ以上は何も言わなかった。

言葉はほどほどにしておくべきだ。結局のところ、多くのことは自分で納得するしかないのだから。

とりわけ感情に関しては、本人が理解していなければ、他人のどんな言葉も幸せを阻む呪いになりかねない。

山波采奈の瞳に浮かぶ葛藤が次第に濃くなっていく中、ドアを押し開けて美谷英介が入ってきた。

彼は冷笑を漏らす。

「まさか君がここまで口が達者だとは思わなかったよ。僕が数分席を外しただけで、危うく味方を寝返らせるところだったじゃないか」

「二言三言で寝返る人なんていな...

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