第3章
もうウンザリだった。クロエにも、カエルにも、この茶番劇全体にも。
私はドアへと振り返り、邪魔なクロエを押しのけようと手を伸ばした。
だが、私の手より先に、彼女の平手が私の頬に乾いた音を立てた。
その音は店中に響き渡った。頬がカッと熱くなり、耳鳴りがした。
考えるより先に体が動いていた。私は彼女の手首を掴んで横にねじり上げ、思い切りひっぱたき返した。彼女の頭が左へ、そして右へと激しく揺さぶられるほどの力で。
見事な二連撃。私の掌もジンジンと痛んだ。
いい気味だ。
クロエはよろめきながら後ずさりし、目を丸くした――痛いからではない、ただ単にショックを受けているのだ。自分に手を上げる人間が本当にいるという事実に。
そして、涙が溢れ出した。
彼女はカエルに泣きつき、その腕にしがみつくと、ガラスが割れそうなほどの金切り声を上げた。
「カエル! この女、私をぶったのよ! 見たでしょ!?」
私は一歩も引かずに立っていた。両脇で握りしめた拳は、爪が皮膚に食い込むほどだった。彼に何か言ってほしかった。一つでもまともな脳細胞が残っていることを証明するような言葉を。
しかし、彼は私を見ようともしなかった。
「押さえつけろ」彼は護衛たちに言った。まるでゴミ出しでも命じるかのように。
最初の一人が飛びかかってきた。私は喉仏に肘打ちを食らわせて沈めた。男は喘鳴を漏らしながら崩れ落ちた。
一瞬、このまま戦って逃げ切れるかもしれないと思った。
だが、二人目の護衛が私の右腕を捕らえた。三人目が背後から私を羽交い締めにし、両手首を固定する。私は暴れ、蹴り、全身をよじって振りほどこうとした。
それでも足りなかった。
彼らはカエルとクロエの目の前で、私を無理やりひざまずかせた。大理石の床に膝の皿を打ち付けられ、歯の根が合わないほどの衝撃が走った。
私は彼を見上げた。私の婚約者。叔母が私のために選んだ男。
「クロエ」彼の声は平坦で、どこまでも無関心だった。
「好きにしていい。後始末は俺がつける」
クロエの涙は、最初から存在しなかったかのように消え去った。彼女は私に歩み寄り、顎を掴んで一度、二度と平手打ちを食らわせた。そして一歩下がると、私の腹にヒールを容赦なく突き立てた。
私はくの字に折れ曲がった。胃液が喉に込み上げる。護衛の拘束に抗って腕に力を込めた――本能のすべてが、戦え、引き剥がせ、代償を払わせろと叫んでいた。
だが、動けなかった。
何一つ、どうすることもできなかった。
「後悔するわよ」食いしばった歯の間から絞り出した。声が震えていた。震えている自分が恨めしかった。
クロエは私と目線が合うまでしゃがみ込んだ。
「ヴォス・パックは東海岸全体で最も強力な一派なのよ」彼女は小首を傾げた。
「あんたは名もなき、ただの野良のオメガ。そんなあんたに一体何ができるっていうの?」
彼女はバッグに手を伸ばした。
小さなガラスの小瓶を取り出す。
銀の溶液。
銀が何をもたらすか、すべての狼が知っている。それは私たちの肉を焼き、骨を溶かし、治癒能力を奪い去る。さらに恐ろしいことに――それは狼の魂を引き裂くための鍵なのだ。
「私をコケにするとどうなるか、教えてあげる」
彼女は私の右腕を掴んで強引に引っ張ると、その銀を私のふくらはぎに直接ドクドクと注ぎ込んだ。
皮膚がジュージューと音を立てた。泡立つ。筋肉が骨から剥がれ落ちていく。組織の縁がどす黒く変色した。
私は絶叫した。
クロエは両手で私のふくらはぎを掴み、力任せに横へとねじり上げた。
骨が皮膚を突き破った。血と銀が床に水たまりを作った。
視界が狭まる。世界は白熱した激痛だけのものに縮み上がった。
だが、彼女はまだ終わっていなかった。
彼女は銀の指輪を取り出した――その表面には、黒いルーン文字が深く刻まれている。狼の魂の抽出。
「やめ――」
彼女はそれを私の額に押し当てた。
金属から黒い光が脈打つ。何かが私の胸の中から引き剥がされた。
私の中の狼が暴れ、爪を立て、留まろうと必死に抗った。
そして、それは消え去った。
すべてが空虚になった。力も、感覚も、温もりも――そのすべてが奪われた。私はただの抜け殻になった。
近くで誰かが囁いた。
「ただ謝っておけばよかったのに……」
「狼の魂がないってことは、もうただの人間と同然だな。彼女は終わりだ」
クロエは半分空になった小瓶を掲げて見せた。
「やめてって命乞いしなさいよ」
「ネックレスは……持っていくがいいわ」私はむせ返りながら声を絞り出した。
「もう、抵抗しないから」
頭上からカエルの声が降ってきた。退屈そうに。
「お前は最初から、お前の叔母が我々一族を繋ぎ止めるために使ったただの駒にすぎない。交渉する権利などないんだよ」
クロエが私の襟首を掴んだ。
「あんたの大事な叔母様の『高貴な血統』の話が出たことだし――あんたの服を剥ぎ取って、その高貴さを皆に見せてあげましょうよ」
「やめて――!」
耳元で振動が走った。
Bluetoothのイヤホン。自動応答だ。
叔母の声だ。
「ジュディ? 今そっちのブティックに向かってるんだけど、そっちは……」
「エララ!」私は叫んだ。
「足を折られた! 狼の魂も奪われたの! お願い、来て!」
彼女の声から温もりが消え失せた。
「誰がそんな真似を」
クロエがイヤホンをひったくり、自分の口元に寄せた。
「私よ、ババア。来なさいよ。二人まとめて相手してあげるから」
沈黙。
そして、叔母の低く静かな声が響いた。
「今向かっている」
クロエはイヤホンをヒールで踏み砕いた。そして私をもう一度ひっぱたいた。
「叔母も叔母なら姪も姪ね。あのババアが来たら、特等席で見せつけてやるわ」
数秒が何年にも感じられた。
やがて、車のエンジン音が聞こえた。ドアが開く。
彼女が降り立った。シャネルのスーツ。隙のないメイク。アフタヌーンティーにでも向かうかのような、あまりにも落ち着き払った佇まい。
しかし、彼女の足が地面に触れた瞬間、その場にいたすべての狼がそれを感じ取った。
群れの権威でもない。階級でもない。
もっと古きもの。
王族のライカンの血筋。
それは「ひざまずけ」と命じるようなものではない。骨の髄まで入り込み、強制的にひざまずかせるような、そんな重圧だった。
野次馬の半分が、考えるより先に地に伏せた。私を拘束していた護衛たちも手を離した――彼らの手は激しく震え、もはや何も掴むことができなかったのだ。
カエルすらも後ずさりした。彼の顔に初めて、傲慢さ以外の何かがよぎる。
エララの視線が私を捉えた。床に崩れ落ち、足は砕け、狼の魂を奪われ、血だまりの中にいる私を。
彼女は一歩、前へ出た。
「見せてもらおうか」静まり返ったブティックの隅々にまで届く声で、彼女は言った。
「私に泥を塗ろうと企んだのは、一体どこのどいつなのかを」
