第4章
エララの姿を見た瞬間、私が必死に押し殺していた感情が、一気に堰を切って溢れ出した。
「エララ!」声が裏返った。
カツン、と鋭いヒールの音が響き、次の瞬間、彼女の腕が私を包み込み、強く抱き寄せた。
私は彼女の胸に崩れ落ちた。
彼女は片腕で私を支えながら少し身をかがめ、私の右脚へと視線を落とした。砕けた骨、銀に焼かれてまだジューッと音を立てている黒焦げの皮膚、そして私の足元に広がる血だまり。それから、銀の指輪を押し付けられた私の額に彼女の指が触れた途端、その全身が硬直するのがわかった。
彼女にはわかったのだ。かつて私の内にいた狼が消え去り、そこが空っぽになっていることが。
私に触れる手は優しかった。だが、その瞳は違った。
周囲で、すぐにざわめきが起こった。
「あの車! 見たことあるか?」
「一度だけな。乗っている人間は決して顔を見せないって話だ」
「持ち主が誰であれ……群れの長老たちでさえ、逆らおうとしない相手だぞ」
クロエの耳には、そんな声は届いていなかった。いや、聞こえていても気にも留めなかったのかもしれない。
彼女は足を引きずりながらも顎をツンと上げ、カエルが後ろ盾にいるという優越感に浸ったまま前に進み出た。
「へえ、あなたが叔母さんね」クロエはエララを上から下まで値踏みするように見て言った。
「可愛いスーツじゃない」
彼女は腕を組んだ。
「これからどうなるか、教えてあげる。あなたのその惨めな姪っ子が私のネックレスを盗んだんだから、あなたにはその十倍の額を弁償してもらうわ。それから、この女は土下座して謝ること。みんなの目の前でね」
彼女は指を一本立てた。
「ああ、そうそう。カエルとの番(つがい)の契約? あれは終わり。白紙よ。今この瞬間からね」
クロエは言葉を区切り、さも寛大な処置をしてやっているとでもいうように小首を傾げた。
「全部その通りにするなら、ここから生きて帰してあげてもいいわよ」
店内は水を打ったように静まり返った。
エララは動かなかった。瞬き一つしなかった。
彼女は私の肩を優しく握った。
「ここで待っていなさい」
そして姿勢を正すと、クロエに向かって歩き出した。
「番の契約は破棄します」エララは言った。その声は完全に落ち着き払っており、むしろ穏やかにすら聞こえた。
「カエル・ヴォスは、私の姪の番に相応しくありませんから」
クロエの顔に浮かんだ嘲笑が深くなる。
「そして、あなたの他の要求についてですが……」
エララの手が動いた。あまりの速さに、私の目にもほとんど見えなかった。
銃声のような平手打ちの音が、空気を切り裂いた。
クロエの首が横に弾け飛ぶ。体もそれに引っ張られた。彼女は大きく二歩よろめき、陳列ケースに手をついてなんとか踏みとどまったが、その拍子にクリスタルの箱の列を床に叩き落とした。
「何一つ、応じるつもりはありませんよ」
クロエは弾かれたように自分の顔に手を当てた。
「あんた、よくも……!」
彼女が飛びかかろうとする。
だが、エララの護衛の一人が前に進み出ると、クロエの胸にブーツを蹴り込んだ。彼女は瞬時に膝から崩れ落ちた。さらに二人の護衛が彼女の腕を後ろ手に押さえつけ、顔を床に押し付けた。
クロエが金切り声を上げた。
「カエル! カエル!」
カエルは奥歯を噛み締め、顎で自分の護衛に合図を送った。
「やれ」
群れの護衛三人が前に飛び出す。
決着がつくまで、およそ八秒だった。
エララの部下たちは、汗一つかくことなく三人全員を床に這いつくばらせた。そのうちの一人がカエルの首根っこを掴んでねじ伏せ、クロエのすぐ隣の床に彼の両膝を叩きつけた。
二人揃って、私の前でひざまずく形になった。
エララは、まるで彼らがただの家具であるかのように、その横を通り過ぎた。
彼女はカエルの前で立ち止まり、長い間、静かに彼を見下ろした。
それから、彼に平手打ちを見舞った。
彼の顔が勢いよく横に弾かれ、唇の端から血が滲むほどの強さで。
「私は今まで」エララは声を低くして言った。
「誰一人としてジュディに指一本触れさせたことはありません。この二十六年間、一度たりとも」
彼女は身を乗り出した。
「それなのに今日、あなたは自分の可愛いペットが、彼女の脚を折り、銀で焼き、狼の魂をえぐり出すのを、ただ見ていたのですね」
カエルは小鼻を膨らませた。顎をきつく噛み締めており、その筋肉がピクピクと痙攣しているのが見えた。
「自分が誰を相手にしているのか、わかっていないようだな」彼は吐き捨てるように言った。
「俺はヴォス・パックの次期アルファだぞ。俺の父は……」
「あなたの父親が」エララは姿勢を正した。
「もし今ここに立っていたとしたら、彼も同じように引っ叩いてやりますよ」
野次馬たちがどよめいた。
「一体何者なんだ、あの女は!」
「今、アルファのジェラード・ヴォスを殴るって言ったぞ。あのジェラード・ヴォスをだ」
「昔、裏社会を牛耳っていたあの男をだぞ。あいつをコケにして生きていられる奴なんていない」
エララは彼らに一瞥もくれなかった。
彼女は私に向き直ってしゃがみ込むと、両手で私の顔を包み込んだ。その親指は、アザを避けるように慎重だった。彼女の瞳が和らぐ。
「ジュディ」その声はもう静かだった。私たち二人だけに聞こえるように。
「もう私がいるわ」
私は血の味がするほど強く、頬の内側を噛んだ。泣かない。こいつらの前でなんて、絶対に。
「この者たちがあなたにしたことすべて」彼女は続けた。
「千倍にして報いを受けさせてあげる」
彼女は私の顔にかかった髪を一筋、そっと払った。
「あなたが彼らにしたいこと、何でも言ってちょうだい。あなたの望む通りにするわ」
