第6章
竹屋尊史のキスが、そっと私の額に落ちてきた。京都の夜風のように優しく、微塵の強引さも感じさせない。
「桜、俺たちの関係を考えてみてくれないか」
彼の声は低く、そして揺るぎなかった。
「君を守りたいんだ」
見上げると、目の前にいるこの男性は、佐藤隆一とはまるで違う。
表面的な優しさと、その裏にある冷酷さがない。そこにあるのは、本物の気遣いと尊重だけ。
「君を追い詰めたいわけじゃない」
竹屋尊史は苦笑した。
「でも、審判を待つ身というのは、どうにも落ち着かなくてな」
その言葉に私は全身が固まった。けれど、自分の心の奥にある答えは、はっきりと分かっていた。
「では、...
ログインして続きを読む

チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章

5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章

9. 第9章

10. 第10章


縮小

拡大