第8章

帝国ホテルの宴会場で、時間はまるで凍りついたかのようだった。

会場中の視線が私に集中し、財界のエリートや社交界の名士たちの眼差しが、息苦しいほどに突き刺さる。

空気に満ちた不穏な静寂の中、私の手のひらは汗ばみ始め、喉は目に見えない手で締め付けられているかのようだ。

隣に立つ佐藤隆一の顔色は、蒼白から土気色へと変わっていた。彼の唇は微かに震え、何かを言いたげだったが、言葉を発することはできないでいる。

尊史はまだ私の手を握っていた。その掌は温かく、揺るぎない。彼はそっと私の方を向き、穏やかな声で尋ねた。

「桜、何か言いたいことはあるかい」

私は全身が強張り、声が出なかっ...

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