第10章

玄関先で、氷の刃みたいに冷え切った男の声が突き刺さった。新谷卿華の言葉を、容赦なく断ち切る。

二人が同時に、ぴたりと固まる。

新谷卿華が振り向く。滲んだ涙越しに見えたのは、扉口に立つ立花真淵だった。

昨夜のままの濃いグレーのオーダースーツ。結び目の緩んだネクタイ。――そして、底冷えするような視線。

艶めいた距離で、ほとんど重なるように立つ二人を、獣みたいな目で睨み据えている。

空気が、その瞬間に凍りついた。

立花真淵の深い瞳は、凍らせた刃のように鋭い。古沢正言が新谷卿華の手首を掴む、その手に釘づけになっていた。

長い脚が、一歩、また一歩と近づく。圧が増すたび、リビングの空気が薄...

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