第104章

「真淵」

立花婆さんは使用人に支えられながら階段を下りてきて、キッチンの入口でぼんやり立ち尽くしている孫を見つけると、声を落として呼びかけた。

立花真淵ははっと我に返り、歩み寄って老人の腕を取る。

「卿華はいい子だよ」

婆さんは真淵の手の甲をぽんぽんと叩き、さらに声を潜めた。責めるような調子が滲む。

「退院してまだ間もないんだ。身体だって本調子じゃないのに、私が具合悪いって聞いたら、すぐ駆けつけて台所に立った。あんた、いつも仏頂面ばかりしてないで、もう少し気にかけてやりな。人の心を完全に折る前にね」

真淵の喉仏がごくりと上下する。視線はまたキッチンへ吸い寄せられた。

「……わか...

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