第109章

「何を騒いでいる」

低く冷えた男の声が割り込み、廊下に張りつめていた火花を断ち切った。

立花真淵が、反対側の通路から歩いてくる。

片手をポケットに突っ込み、深い黒の瞳でその場の面々を一瞥する。最後に視線が止まったのは、新谷卿華の凪いだ表情だった。

羽田糸は彼の姿を見ても怒りが収まるどころか、むしろ火に油を注がれたように燃え上がる。

「立花社長、ちょうどいいところに来たわね」

羽田糸は高山峰を乱暴に押しのけ、まっすぐ立花真淵を射抜いた。語気は容赦がない。

「この犬がね、あちこちで噛みついてるの。卿華が汚い手でチケットを手に入れたとか、私生活が乱れてるとか、男と寝て回ってる女だとか...

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