第112章

新谷卿華は、完全に身動きが取れなくなっていた。

立花婆さんの鋭い視線に刺されるように見つめられ、彼女は仕方なくスマホを取り上げ、立花真淵の番号を押す。

呼び出し音はやけに長い。

――出ないでくれれば、どれだけ楽か。

そう思って息を吐きかけた、その瞬間。

繋がった。

「もしもし? 卿華姉さん?」

受話口から聞こえたのは、須藤郁夜の甘ったるく作った声だった。

静まり返った広いレストラン。スピーカーにしたわけでもないのに、耳にまとわりつくように響いて、やけに不快だ。

新谷卿華の目が、一瞬で冷える。

彼女は何も言わず、赤い終了ボタンを押した。

ぷつり。

店内が、死んだみたいに...

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