第113章

夜八時。「ナイト」レストラン。

海市でも指折りのダイニングバーだけあって、店内は静かで、席の間隔も広い。余計な視線が届かない、ほどよい密室感がある。

暗い色のテーブルに琥珀色の照明が落ち、サックスの旋律が空気の底をゆっくり撫でていた。

新谷卿華、羽田糸、金田川浬の三人は、窓際の半個室に腰を落ち着けている。

「さあ、乾杯。新谷先生、お誕生日おめでとう。早く苦海から抜け出せますように」

羽田糸がワイングラスを掲げる。赤い唇が、ぱっと華やぐ笑みに弧を描いた。

新谷卿華は目の前の氷水を持ち上げ、軽くグラスを合わせる。口元に、ほんの少しだけ本物の笑みが浮かんだ。

「縁起でも担いでおく」

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