第116章

電話を切ると、古沢正言はスーツの上着を整え、立花真淵と新谷卿華のあいだに視線を一度走らせた。

当然だと言わんばかりの顔で、説教くさい口調になる。

「夫婦なんだから、ちゃんと話し合え。いつまでも意地張ってるな。卿華、いい加減にしろ」

言い捨てると、古沢正言はそれ以上居座らず、くるりと踵を返して自分のベントレーへ向かった。ドアを開け、そのまま乗り込み、走り去る。

ベントレーは通りへ滑り出し、マフラーの唸りもすぐ車の流れに溶けて消えた。

路肩に残ったのは、立花真淵と新谷卿華だけ。

空気が、すとんと静まる。

初冬の冷たい風が吹き抜け、足元の枯れ葉を数枚、さらりと巻き上げた。

立花真淵...

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