第120章

その平手打ちは十割の力が乗っていた。須藤郁夜は殴られた衝撃でくらりとよろめき、耳の奥がじんじんと鳴る。

「私の前で、被害者ぶらないで」

新谷卿華が氷みたいな声で言い放つ。

須藤郁夜は頬を押さえたまま、瞬時に涙を溜め、泣き叫ぶように立花真淵へ縋った。

「真淵……助けて……!」

立花真淵は一瞬、呆けた顔をして――慌てて手を伸ばしかける。

「新谷卿華、お前、頭おかしいのか!」

だが新谷卿華のほうが速かった。須藤郁夜の髪をぐいっと掴み、反対の手で、ためらいなくもう一発。

「パンッ!」

乾いた音が駐車場に弾ける。

「顔見るだけで吐き気がする」

澄んだ声。けれど一言一言が、石みたい...

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