第126章

彼は新谷卿華をちらりと見やり、電話に出た。

「どうした」

受話口の向こう、江口伊予の声は――わざとらしいほど、弱々しい。

古沢正言は眉を寄せ、声音だけを柔らげる。

「わかった。そこで待ってろ」

通話を切ると、古沢正言はスーツの裾を整えた。

そして新谷卿華へ視線を戻し、さっきまでの高圧的な顔に戻る。

「伊予の具合が悪い。ちょっと行ってくる。お前は冷静になれ。考えがまとまったら、いつでも連絡しろ」

新谷卿華の返事も待たず、彼は踵を返してエレベーターへ向かった。

まるで、自分が何か大層な施しでも与えたかのように。

背中が遠ざかるのを見送りながら、新谷卿華は思った。

空気が、や...

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