第129章

立花真淵の頭の中が、真っ白になった。

――彼女は、俺のことが好きだった。

金のために無理をしていたわけじゃない。好きだからこそ、進んでこの結婚に足を踏み入れたのだ。

その理解は濁流みたいに一気に押し寄せ、立花真淵を呑み込んだ。

胸の奥のいちばん深いところから、巨大な歓喜が噴き上がる。理性が、洗い流されていく。

「卿華……」

声が掠れて、まともな形にならない。立花真淵は一歩踏み出し、彼女の手を掴もうとした。

新谷卿華は、避けた。

迷いのない、切れ味のいい動き。そこに未練は一欠片もない。

立花真淵の手が、宙で固まる。歓喜の波が引いたあとに残ったのは、骨まで凍るような冷たさだった...

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