第130章

彼が目を赤くして想いを打ち明けた、その瞬間だけは――彼女も確かに、一秒ほど動けなくなった。

けれど、痛すぎた。

絶望と期待のあいだで毎日もがく日々は、鈍い刃みたいに、じわじわと彼女の熱も自信も削り取っていった。

もう触れたくない。

理性ははっきり告げている。立花真淵の「好き」は、歪んだ支配と探りを伴う。そんな感情は毒だ。

逃げなきゃ。できるだけ遠くへ。

新谷卿華は目を閉じないまま、窓の外が白み始めるのを見届けた。

朝7時。身支度を整えて階下へ降りる。

キッチンから小さな物音がして、卿華はそちらへ向かい――足を止めた。

立花真淵が、薄いグレーの部屋着姿で袖をまくり、中島台の前...

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