第143章

個室は、息が詰まるほど静かだった。

この過去を知っているのは、立花真淵のごく身内――数人だけ。

「朔が最期まで放っておけなかったのは、恋人の須藤郁夜だった」

立花真淵は新谷卿華をまっすぐ見た。逃げも誤魔化しもない眼差しで。

「坂東朔は俺に郁夜を託した。面倒を見てくれって、頭を下げた。……俺は朔に命を助けられてる。だから約束した。海市で須藤郁夜が困らないように、衣食住だけは保証するって」

真相が、すとんと落ちた。

絡みつくような昔の情なんて、どこにもない。あるのは、重すぎるほどの命の借りだけ。

「この三年、あいつに金もコネも突っ込んで、後ろ盾になってたのは朔への返しだ」

立花真...

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