第146章

扉が閉まった瞬間、須藤郁夜の顔からか弱さが跡形もなく消えた。残ったのは、ぞっとするほど歪んだ表情だけ。

彼女はスマホを取り出し、ある番号へ発信する。

「馨ちゃん、私……郁夜。会いたくてたまらないの……」

週末、立花本家。

黒いマイバッハが中庭に滑り込み、立花真淵が新谷卿華の手を引いて降りた。

客間では立花婆さんが上座に座っており、二人の姿を見つけた途端、口元がぱっと綻ぶ。

「卿華、こっちへおいで。ばあちゃんに顔を見せて」

新谷卿華は歩み寄り、婆さんの傍で言葉を交わす。立花真淵はコートを脱いで使用人に渡し、卿華の隣に腰を下ろした。何気なくみかんをひとつ剥き、白い筋まで丁寧に取り除...

ログインして続きを読む