第162章

彼は視線を落とし、彼女の手の甲に、宝物を扱うような慎ましいキスを落とした。

それから立花真淵は運転席にきちんと座り直す。だがエンジンをかける気配はない。身体をひねって後部座席から分厚い黒のファイルを取り出し、新谷卿華の前へ差し出した。

「……これ、今度は何?」

新谷卿華は訝しげに受け取る。

ずしりと重い。

「俺の全財産」

立花真淵は、今夜の献立でも話すみたいに軽い調子で言った。

「立花グループの株式40%。海市と海外の不動産全部。それから俺名義のプライベートファンド。弁護士に財産分与の契約書を作らせた。全部、お前の名義に移す」

新谷卿華がファイルを開くと、条項がびっしり並んで...

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