第20章

立花真淵は新谷卿華の肩を掴む手にぐっと力を込めた。指の関節が白く浮く。

目の前の女を見る。

顔色は紙みたいに青白い。かつての――卑屈なほど自分だけを映していた光は、もう瞳の底にない。あるのは、ぞっとするほどの静けさ。死んだ水面みたいな、音のない闇。

手綱がすり抜けていく感覚が、理由もなく立花真淵を苛立たせた。

「……いい。お前の望みどおりにしてやる」

立花真淵は乱暴に手を放すと、汚れでも払うように袖をぱんぱんと叩いた。目つきは陰湿で、底冷えするほどだ。

「新谷卿華。自分で頼んだんだぞ。あとで土下座して復縁を求めてきても――俺は知らない」

吐き捨てて、背を向ける。

新谷卿華は、...

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