第25章

低く、氷のように硬い男の声が、唐突に夜の静けさを切り裂いた。

新谷卿華はびくりと肩を震わせ、振り返る。

花壇沿いの影から、古沢正言がすっと姿を現した。

指先に挟んだ煙草。ゆらゆらと立ちのぼる煙の向こうで、奥行きのある瞳が、瞬きひとつせず彼女を捉えている。

新谷卿華は反射的に目を逸らした。

ベンチに手をついて立ち上がり、見えていないふりをして踵を返す。反対方向へ歩き出そうとした、その瞬間――

「止まれ」

古沢正言が数歩で詰め、長身の影が正面を塞いだ。

じり、じり、と距離を詰められ、彼女はベンチと花壇の角へ追い込まれる。

逃げ場がない。背中が、冷たい花壇の縁に当たった。

新谷...

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