第31章

洗面所を出て、豪奢な装飾の曲がり角を折れた瞬間だった。聞き覚えのある甘い笑い声が、男たちのへつらうような賛辞と混ざり合って、前方のVIPラウンジから流れてくる。

「須藤嬢、今回の春季展の作品は圧巻でしたよ。お若いのにあの才……末恐ろしい。将来が楽しみですな」

「まったくです。うちのブランドラインも、これからは須藤嬢のデザインに頼らせてもらわないと。立花社長、いやあ、羨ましい限りだ。才色兼備の恋人をお持ちで」

新谷卿華の足が、ぴたりと止まった。

廊下の半明かりの陰。背の高い観葉植物の向こうに、彼女ははっきりと見てしまう。

須藤郁夜――肌を引き立てるヌードピンクのオートクチュールに身を...

ログインして続きを読む