第34章

新谷卿華は、目の前で激昂する立花真淵を見ても、もがきもしなければ、取り乱しもしなかった。

ただ、ひどくゆっくりと。少しずつ、少しずつ。自分の顎をつかむ彼の指を一本ずつ外していく。

「立花真淵」

新谷卿華の声は静かだった。けれど、その奥には胸を凍らせるほどの決意が宿っていた。

「私が一生、あなたの周りを回って生きるとでも思ってるの? 惨めに尻尾を振って、乞食みたいにあなたの情けを待ちながら、ほんの少しの愛を恵んでもらうしかない女だと?」

立花真淵の手が宙で止まる。

胸の奥を、鋭い棘で突かれたようだった。

「そんなこと、もう二度とないわ」

新谷卿華はスーツケースの取っ手を引き寄せ...

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